
人気ルーターブランドであるTP-Linkのルーターが米国で禁止される可能性が高まっている。The Washington Post(WP)の報道によると、6以上の連邦政府省庁がこの提案を支持しているという。
この件に関するニュースが最初に報じられたのは2024年12月のことだ。商務省、国防総省、司法省の捜査官が、中国との関係に起因する国家安全保障上のリスクを理由に同社への調査を開始したと、The Wall Street Journal(WSJ)が報じた。それ以来、TP-Linkに関するニュースはそれほど多くなかった。
現在、この提案は省庁間の支持を得ている。
「商務省は、TP-Link Systemsの製品がリスクをもたらすと結論付けた。その理由として、米国に拠点を置く同社の製品が米国の機密データを扱っていること、そして当局が、同社は依然として中国政府の管轄権や影響の下にあると考えていることを挙げている」とWPは伝えている。
TP-Linkと中国政府とのつながりは、あくまで疑惑にすぎない。同社(厳密にはTP-Link Systems)は過去、筆者に対し、中国企業であることを強く否定してきた。
「独立した米国企業として、中国を含むいかなる外国や政府も、当社の製品の設計や生産にアクセスしたり、管理したりすることはできない」とTP-Linkの広報担当者は米CNETに語った。
TP-Linkは1996年、中国の深圳でJeffrey (Jianjun) Chao氏とJiaxing Zhao氏の兄弟によって設立された。2024年10月、下院特別委員会の委員がTP-Link製ルーターの調査を要求した2カ月後、同社はTP-Link TechnologiesとTP-Link Systemsの2社に分かれた。
TP-Link Systemsはカリフォルニア州アーバインに本社を置き、WPの報道によれば米国に約500人、中国に1万1000人の従業員を擁している。Chao氏とその妻が同社を保有している。
「TP-Linkの異常なレベルの脆弱性と、(中国の)法律順守の義務は、それ自体が憂慮すべきことだ」と議員らは2024年10月に記した。「(中国)政府が、米国で大規模なサイバー攻撃を実行するためにTP-Linkなどの(ホームオフィス向け)ルーターを一般的に使用していることと合わせると、事態は著しく憂慮すべきものとなる」
同社はパンデミック以降、米国のルーター市場で圧倒的な力を持つようになった。WSJの報道によると、同社のルーター売上高のシェアは2019年の20%から、2025年には約65%にまで成長したという。TP-Linkは米CNETに対しこれらの数字を否定しており、ITプラットフォームのLansweeperによる別の分析では、現在米国で使用されているホームルーターの12%がTP-Link製であることが分かった。WSJによれば、300以上のインターネットプロバイダーが顧客にTP-Link製ルーターを支給している。
これとは別に、司法省の反トラスト部門は、TP-Linkが競合他社を排除するために人為的に価格を不当に引き下げる、略奪的な価格設定の手法をとったかどうかを調査している。
禁止案は省庁間の審査を経て、現在は商務省の手に委ねられている。WSJの報道によると、この件に詳しい情報筋は、トランプ政権が現在進めている中国との交渉により、近く禁止措置が実行される可能性は低くなったと述べたという。
TP-Linkの広報担当者は、「政府がTP-Linkについて抱いているいかなる懸念も、開発機能の国内回帰、サイバーセキュリティへの投資、透明性の確保といった常識的な対策を組み合わせることで完全に解決可能だ」と述べた。「TP-Linkは引き続き米商務省と協力し、政府のいかなる懸念も確実に理解し、対応できるようにしていく」
あなたのTP-Link製ルーター、心配の必要はある?
筆者は数カ月前、TP-Link製ルーターを慌てて買い換えるつもりはないと書いたが、その気持ちは基本的に今も変わらない。
2024年12月にこの件が最初に報じられた際、筆者は4人のサイバーセキュリティ専門家に、それでもTP-Link製ルーターを使い続けるかと尋ねた。1人は「ノー」と強く回答。別の1人は「消費者にとってリスクがある」と述べた。そして2人は、質問への直接的な回答を避けた。
Itay Cohen氏は、TP-Link製ルーターに中国政府支援のハッカー集団に関連するファームウェアが仕込まれていたことを特定した2023年の報告書を執筆した1人だ。同氏は以前のインタビューで、同様のインプラントは世界中で製造されている他のブランドのルーターからも発見されていると筆者に語った。
「中国製ルーターを全面的に避ける根拠となる、公開済みの十分な証拠はないと考えている」とCohen氏は述べた。「ルーターに関連する脆弱性やリスクは概してシステム的なものであり、米国製を含む幅広いブランドに当てはまる」
筆者が話を聞いたすべてのサイバーセキュリティ専門家から、同様の趣旨の話を聞いた。TP-Linkにはセキュリティ上の欠陥があるが、それはすべてのルーターに言えることであり、筆者は特に中国政府との協力関係を示すような欠陥を指摘することはできなかった。
とはいえ、政府が一般には知られていない脆弱性を把握している可能性も十分にある。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。
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