
NTTは2025年11月4日、自動運転事業を推進する専業会社「NTTモビリティ」を12月15日に設立すると発表した。資本金は14.3億円で、NTTが100%出資する。NTT東日本、NTT西日本、NTTドコモ、NTTドコモビジネス、NTTデータが全国各地で進めてきた自動運転の実証実験で培った知見を集約し、自動運転の社会実装を加速する。

NTTが実証実験を行っていた、May Mobilityの自動運転車両
高齢化でドライバー不足、勝機は2030年に数百億円規模
背景には少子高齢化に伴うドライバー不足がある。改正道路交通法の施行により、2023年から特定条件下での自動運転レベル4での公道走行が可能となった。政府は2025年度に約50カ所、2027年度までに100カ所以上の地域での実現を目標に掲げている。
島田明社長は決算会見で「クルマはあるがドライバーがいないという状態。高齢化が進んでいるのでニーズはある」と述べ、事業規模について「2030年くらいに数百億円の売上げがあるビジネスになればいい」との見通しを示した。
バラバラだった各社の実証を統合、数十人規模でスタート
新会社はNTTグループ各社が個別に取り組んできた自動運転サービスを統合する。所在地は東京都港区で、当初は数十人規模でスタートする。NTTグループはこれまで全国35カ所で自動運転の実証実験に取り組んできた。島田社長は「東西がやったりドコモビジネスがやったりドコモがやったりしていたが、ノウハウを結集してやっている」と説明した。

NTTモビリティの説明スライド
主な事業内容は3つだ。自動運転車両の調達・提供・保守・メンテナンスなどを行う「自動運転車両提供・管理サービス」、走行エリアの構築やマップ作成、運行トレーニングプログラムの提供を含む「自動運転導入・運用支援サービス」、遠隔監視システムの構築・提供を行う「遠隔監視システム提供サービス」を展開する。
遠隔監視で複数の自動運転システムを統括、トヨタ連携と相互補完
新会社の強み1つは遠隔監視システムの提供にある。島田社長は「1つのキーポイントは遠隔監視、システムの提供」と述べた。米May Mobilityなど複数の自動運転システムベンダーの車両を、1つのプラットフォームで動かせる仕組みを構築する。地図データと環境を一体化して運用し、「ある自動運転プラットフォームのところにいろいろなオペレーションの会社のクルマを走らせる」体制を目指す。
NTTはトヨタと2020年に資本提携し、AIと通信を活用した交通事故防止の基盤構築を進めている。島田社長は「トヨタとNTTのプラットフォームは全国をまたがるプラットフォーム。今回は地域ごとの自動運転基盤」と説明し、トヨタとの連携は信号や交通インフラと連携した安全基盤であり、「どちらかというと更なるインフラ」と位置付けた。
2027年度までに、遠隔監視システムやインフラ協調システムなどのNTTグループの強みを活かした自動運転サービスの提供を目指す。定時・定路線バス、オンデマンドバス、タクシーなど、地域によって異なる交通サービス形態や技術要件に対応し、地方自治体や交通事業者との連携を深めていく。