
JR東日本新潟支社は、冬季の沿線斜面調査にVTOL(垂直離着陸)型ドローンを活用する実証実験を行った。エアロセンス(東京都北区)が開発した固定翼で水平飛行できる機体を用い、降雪時でも迅速で安定した点検体制の構築をめざす。

AS-VT01K
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実験で使用したのは国産VTOL型「AS-VT01K」で、国土交通省の第二種型式認証を取得している。このため申請を行わずに目視外飛行が可能だ。LTE通信を使った遠隔操作に対応し、最大50kmの自動飛行ができる。離着陸はマルチコプターと同じ垂直方式で行い、上昇後は固定翼で飛行する仕組みで、従来のマルチコプター型より目的地へ短時間で到達できる。最大積載は1kg、最高速度は時速100kmとなっている。
JR東日本グループが展開する列車荷物輸送サービス「はこビュン」での輸送検証も計画している。新幹線で機材を運べるようになれば、調査に必要なドローンを迅速に届けられるほか、災害時の緊急輸送にも活用できる可能性がある。
実証実験では、JR東日本として初めてレベル3.5の自動飛行を実施した。ジンバルカメラで撮影した映像と録画データで積雪状況を確認し、従来の調査と同等の精度を保ちながら、より短時間で状況を把握できることを確かめた。
さらに12月の上越線での試験では固定カメラを用い、積雪下での3D点群データや航空写真の生成を検証した。映像と位置情報は新潟市中央区の施設管理部門に配信し、遠隔地からでも現場の状況を即時に把握できることを確認した。
今回の実証は、JR東日本新潟支社、第一建設工業、東鉄工業、エアロセンスの4社が実施した。豪雪地帯ではこれまで徒歩や車による巡回に加え、広域調査にはヘリコプター、スポット調査にはマルチコプター型ドローンを使い分けてきた。しかし中距離区間では機材移動に時間がかかるという課題があり、VTOL型の活用によって新たな調査手法を確立できる可能性を探る。