
眼鏡市場を展開するメガネトップは2月2日、カメラ付きスマートグラス「Linse(リンゼ)」とオーディオグラス「Linse Lite(リンゼライト)」を発表した。2月6日から全国の眼鏡市場の130店舗で販売する。価格はLinseが5万5000円、Linse Liteが1万9800円(いずれも税込)。オンライン販売は行わない。

眼鏡市場のスマートグラス「Linse」(左)とオーディオグラス「Linse Lite」。Linseは充電機能付きケースとなっている
Linseは1200万画素のカメラを搭載し、写真や動画の撮影、音楽再生、通話、録音ができるスマートグラスだ。スマートグラスにはディスプレイを内蔵してAR表示ができる製品もあるが、Linseはディスプレイを備えず、AI機能も搭載しないシンプルな構成となっている。動画は最大1分間、1920×1440ピクセル(30fps)の縦長で撮影できる。写真は3000×4000ピクセル。ストレージは32GBを内蔵する。本体重量は約45gで、防水性能はIP54に対応する。

Linse本体。左右のフレームにカメラとLEDセンサーを備える
Linse Liteはカメラを省いたオーディオグラスで、音楽再生と通話に対応する。本体重量は約40g、防水性能はIPX4。連続再生時間は約5時間30分で、Linseの約4時間を上回る。

LinseとLinse Liteの機能比較。Linse Liteはカメラや録音機能を省いた廉価モデルとなる
両製品ともBluetooth 5.3に対応し、LinseはWi-Fi 6にも対応する。専用アプリはiOSとAndroidの両方に対応しており、撮影した写真や動画をスマートフォンに取り込める。音声操作は日本語、英語、中国語に対応し、「ハイLinse、動画を撮って」と話しかけると撮影が始まる。

専用アプリのホーム画面。写真・動画・録音の取り込みに対応する
「毎日かけるメガネとして成立するか」を基準に開発
同日開催された発表会で、メガネトップ商品開発部の吉田和弘部長は「ガジェットとしてどうかではなく、毎日かけるメガネとして成立するかという観点で商品と向き合ってきた」と開発の経緯を説明した。検討期間を含め、開発には4年以上を費やしたという。

Linseを手に説明するメガネトップ商品開発グループの早田直純グループ長
メガネトップは福井県鯖江市にフレームの自社工場を持ち、生産から販売まで一貫体制を構築している。国内1035店舗、海外28店舗を展開し、2024年度には国内売上高1000億円を達成した。吉田氏は、2027年夏に完成予定の鯖江新工場でオープンファクトリーを実施する計画も明かし、「そこでもこの商品が活躍できる」と述べた。
商品開発グループの早田直純グループ長は、Linseの利点として「手が塞がった状態でも撮影できる」「自分の目線そのままで記録できる」の2点を挙げた。発表会では、ラジコンの操作中にメンテナンス手順を撮影した動画や、眼鏡の製造工程を記録した社内教育用の映像を紹介。早田氏は「店頭ディスプレイの組み立て手順をLinseで撮影したところ、紙のマニュアルより分かりやすいと好評で、スタッフからの質問も減った」と社内での活用事例を語った。

Linse本体。左右のフレームにカメラとLEDセンサーを備える
撮影時はLED点滅とシャッター音、センサーを塞ぐと動作せず
スマートグラスは海外では普及が進む一方、日本国内ではプライバシーへの懸念から広がりが限定的だった。早田氏は「他社に先んじて投入することではなく、社会に受け入れられる形にできるかを重視した」と話し、3つのプライバシー対策を説明した。
1つ目は、撮影中であることを周囲に知らせる仕組みだ。写真撮影時にはシャッター音が鳴り、動画撮影中は本体前面のLEDが点滅する。2つ目は、LEDセンサー部分を指などで塞ぐと撮影機能が起動しない設計にしたこと。3つ目は、シャッター音を消せない仕様にしたことだ。

プライバシー対策の説明スライド。LEDセンサーを塞ぐと撮影機能が起動しない設計になっている
発表会では早田氏が実際にLinseを装着し、音声操作で動画撮影を実演した。LEDセンサーを手で覆った状態で「ハイLinse、動画を撮って」と話しかけると、撮影機能が起動しないことを確認した。
音漏れについても検証が行われた。早田氏がLinseで音楽を再生しながら会場内を歩き回ったところ、隣にいる程度の距離ではほとんど聞こえないことが確認できた。
オンライン販売を見送った理由
販売を店頭に限定した理由について、早田氏は「取り扱いの手法や利用上の注意点が多岐にわたる。お客様にしていいこと、ダメなことをしっかり説明し、納得いただいた上で販売したい」と説明した。度付きレンズへの交換やレンズカラーの変更にも対応するが、別途レンズ代がかかる。

オーディオグラス「Linse Lite」の展示。価格は1万9800円で、度付きレンズにも対応する
初回生産台数はLinseとLinse Liteを合わせて6000台。販売店舗も130店舗と国内全店舗の約1割に絞った。早田氏は「短期的な売上目標よりも、中長期で社会に受け入れられることを重視している」と述べた。大規模な広告宣伝は予定しておらず、店頭での説明販売を中心に展開する方針だ。

Linseで撮影した写真をアプリで確認したところ。動画・写真ともに縦長で記録される
質疑応答では、動画が縦長である理由について設計品質管理の田中氏が「横幅の制限があり、センサーを縦長に配置せざるを得なかった」とハードウェア上の制約によるものと説明した。電子手ブレ補正にも対応しており、自転車での走行中など振動のある環境でも撮影できる。
AIスマートグラス市場は2024年に13億ドル規模と評価され、2025年から2032年にかけて年平均11.09%で成長すると予測されている(S&S Insider調べ)。Metaの「Ray-Ban Meta」(日本未発売)など海外勢が先行する中、国内大手眼鏡チェーンによる参入は、日本市場での普及を後押しする可能性がある。

会場に展示されたLinse(上)とLinse Lite(下)