
人工知能(AI)分野の急成長と、圧倒的な量のデジタルコンテンツが氾濫した1年。辞典で知られるMerriam-Websterは、2025年の「今年の言葉(Word of the Year)」に「slop(スロップ)」を選出した。たった4文字のこの単語は、今やあらゆる画面やソーシャルメディアのフィードにあふれる低品質なAIコンテンツを表している。
もともと1700年代には柔らかい泥を、1800年代には食品廃棄物やゴミを指す言葉として使われていた「slop」だが、今では21世紀ならではの意味合いを帯びている。Merriam-Websterはこれを「主にAIによって総じて大量に生成された、低品質なデジタルコンテンツ」と定義している。
ばかげた動画、不具合だらけの広告、騙されそうになるフェイクニュース、AIが書いた質の低い本、そして言葉を話す動物たちなどを思い浮かべてほしい。今やヴァレンティノのような高級ブランドでさえ、「slop」な広告を打ち出しているほどだ。
Merriam-Websterは発表の中で、「slime(スライム)、sludge(ヘドロ)、muck(汚物)と同様に、slopには触れたくないような濡れた響きがある」と述べている。この言葉は、悪化の一途をたどる今日のAI情勢に対する、困惑と苛立ちが入り混じった世の中の空気を捉えている。
2025年:AIコンテンツの氾濫によって定義された1年
大小さまざまなテクノロジープラットフォームが、2025年に急増した生成AIコンテンツへの対応に追われた。ディープフェイクや、価値より量を優先するクリックベイト的な制作物まで、その種類は多岐にわたる。AIによる「slop」の波は、コンテンツを大規模に生成することがいかに容易になったかだけでなく、その多くがいかに人間の視聴者の心に響かないかという現実をも映し出している。
Merriam-Websterの編集者たちは、この単語が際立っている理由として、文化的トレンドと社会全体の感情の両方を捉えている点を挙げる。それはテクノロジーへの恐怖というよりも、コンテンツがいかに無分別に拡散され得るかを揶揄(やゆ)するニュアンスを含んでいる。
2025年を形作ったその他の言葉
「slop」がトップの座についた一方で、Merriam-Websterは今年の言説を定義づけたその他の用語も紹介している。
- 67:ソーシャルメディアで生まれた流行のスラング。アルファ世代の間で内輪ネタ的な盛り上がりを見せている。
- Performative(パフォーマティブ):実質的な意味よりも、見せかけや影響力のために行われる行動を指摘する際に使われる。
- Touch grass(外の空気を吸え/現実を見ろ):デジタルへの執着を断ち切り、現実世界とのつながりを取り戻すよう促すフレーズ。
- Gerrymander(ゲリマンダー)および tariff(関税):政治や経済のニュースで注目された言葉。
これらの選出語は、インターネットカルチャーから政治、そしてテクノロジーとの付き合い方に至るまで、2025年における人々の関心の広さを示している。
その他の「今年の言葉」
今年の言語について意見を表明しているのはMerriam-Websterだけではない。その他の媒体による2025年の「今年の言葉」は以下の通りだ。
- オックスフォード大学出版局:「rage bait(怒りを誘う釣り投稿)」。オンライン上で怒りを煽り、エンゲージメントを高めるために作られたコンテンツを指す。
- 豪マッコーリー辞書:「AI slop」。Merriam-Websterのテーマと同様、デジタル上の粗悪なコンテンツを指す。
- ケンブリッジ辞書:「parasocial(パラソーシャル)」。オンライン上の著名人やAIチャットボットとの一方的な関係性に焦点を当てている。
- Dictionary.com:「67」。若者文化の一端を捉えた、バイラルでほとんど意味を持たないスラング。
これらを合わせると、デジタル世界に対する疲労、魅了、そして不満の間で揺れ動く世代の姿が浮かび上がってくる。
なぜ重要なのか
テクノロジーに詳しい読者にとって、「slop」は単に面白い言葉というだけではない。それはAIの展開、コンテンツモデレーション、そして文化的認識におけるより深いトレンドの兆候でもある。
自動生成ツールがますます一般的になり、使いやすくなるにつれ、デジタル空間における「信号」と「雑音」の比率は、より顕著で重要なものになっていくだろう。アプリを開発する側であれ、フィードを整理する側であれ、あるいは無意味なミームの次の波を避けようとしている側であれ、2025年の「今年の言葉」は、依然として「質」が重要であることを思い出させてくれる。そして時として、言葉そのものがそれを鮮やかに指摘してくれるのだ。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。
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