
Appleは新しい「M5」チップの発表後、その実力を知ろうとするわれわれを長く待たせることはなかった。
米CNETは、新しいM5チップを搭載した「iPad Pro」と14インチ「MacBook Pro」を実際に入手した。Appleが新世代のM5チップと旧世代のM4チップとの間にどれほどの差を生み出したかが明らかになった。
M4からM5で変わった点
スペック上は、いくつかの明らかな類似点がある。M4とM5チップはどちらも、4つの高性能コアと6つの高効率コアを組み合わせた10コア構成が用意されている。10コアGPUも搭載しているが、新しいM5のGPUコアにはAIとレイトレーシングの性能を向上させるニューラルアクセラレータが含まれている。
Appleは、CPUコアやGPUコアの少ないバージョンのチップも用意している。しかし、そうしたコア数の変更に関わらず、Appleは同じ命名規則を使用している(購入者は注意が必要だ)。
したがって、CPUやGPUのコア数を変えずに期待できる性能差は、アーキテクチャの移行によるものだ。その1つがメモリ帯域幅の向上であり、M4の最大120GB/sに対し、M5は最大153GB/sを提供する。
M5はどれほど高速か?
ノートPCとタブレットの両方でM5チップをテストする機会を得て、われわれは、M5が同様のハードウェアに搭載されたM4と比べてどれだけ高速であるかを明確に理解できた。
われわれのベンチマーク全般において、M5搭載MacBook ProはM4モデルと比較して性能の向上が見られた。シングルコア性能はM5によって大きく向上し、「Cinebench R24」で13.7%、「Geekbench 6」で18.8%リードしている。分かりやすく言えば、これはすでに利用可能なコンシューマー向けCPUの最強クラスのシングルコア性能が、さらに向上したということだ。AMD、Intel、あるいはQualcommの製品と比較しても、Appleは依然としてシングルコア性能でリードを保っている。
Appleのマルチコア性能のアップグレードは、それほど大きくないようだ。Geekbench 6では、M5はM4を18.5%上回ったが、Cinebench R24では11.9%の向上にとどまった。iPad Pro同士の対決でも同様に僅差であり、Geekbench 6においてM5モデルがM4モデルのマルチコア性能を上回ったのは10%弱だった。
しかし、Appleのアップグレードが真に輝くのはGPUだ。Geekbench 6において、M5の新しいGPUコアはM4搭載MacBook Pro 14に対して31%の性能向上をもたらし、この向上幅はCinebench R24のGPUテストでは45%に達した。
M5はゲームに適しているか?
ビデオゲームのグラフィックスベンチマークでも同様の傾向が見られ、「Steel Nomad」でM5がM4を35%、「Steel Nomad Light」で45%、「Solar Bay Extreme」で46%リードした。この性能により、M5搭載MacBook Proは「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」を、ゲーム内設定「最高」、解像度1080pで平均56fpsで実行できたほどだ。
M5はAI性能を向上させるか?
AI性能も、新しいニューラルアクセラレータによって大幅に向上している。「Geekbench AI」において、M5搭載MacBook Proは、M4搭載MacBook Proだけでなく、「M4 Pro」搭載モデルさえも12%上回った。M5モデルは画像生成性能も大幅に向上させ、「Procyon Stable Diffusion 1.5」においてM4搭載MacBook Proが達成できた性能のほぼ2倍を記録した。
これだけの性能向上がありながらも、M5は電力効率も高いことが分かった。M5搭載MacBook Proのバッテリーテストでは、M4搭載MacBook Proの約22時間のバッテリー持続時間から丸1時間延び、約23時間に達した。
M5にまだないアップグレードの選択肢
新しいM5チップは、確かにM4やそれ以前の基本モデルのチップから着実なステップアップを遂げているが、Appleシリコンを使っているすべての人にとって、すぐにアップグレードすべきものとはならないだろう。個々のコアレベルではM5チップは素晴らしいアップグレードだが、今のところ1つのバージョンしか存在しない。
これまでのApple製チップには、CPUとGPUのコア数を大幅に増やした「Pro」バージョンや「Max」バージョンが用意されてきた。場合によっては、より高性能なコアであっても数が少なければ、より多くのコアに性能で劣ることがあり得る。
10個の高性能コアと4個の高効率コアを組み合わせた「MacBook Pro 16」搭載のM4 Proチップと比べると、M5のマルチコア性能はGeekbench 6で21%、Cinebench R24で36%も劣っている。M4 Proは20コアGPUも搭載しており、われわれが行ったCinebench、Geekbench、「3DMark」のテストでは、M5の10コアGPUを平均30%以上上回った。
今のところ、M5のラインアップは、旧世代Mシリーズのベースモデルから移行するユーザーにとっては大幅なアップグレードとなるかもしれない。しかし、この新しいシリコンを旧世代と本格的に(ProやMaxも含めて)比較するには、「M5 Pro」や「M5 Max」チップの登場を待たなければならないだろう。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。
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