
ガーミンジャパンは9月16日、GPSウォッチ「fēnix(フェニックス)」シリーズの新製品2機種を発表した。「fēnix 8 Pro」と「fēnix 8 Pro MicroLED」で、両機種ともLTE-M通信機能を搭載している。スマートフォンなしで通話やメッセージ送信ができる。
標準モデルfēnix 8 ProはAMOLEDディスプレイで20万6800円。MicroLED版はスマートウォッチ初のMicroLEDディスプレイを採用し31万8800円。10月に販売を開始する。

Garmin fēnix 8 Pro MicroLED

Garmin fēnix 8 Proシリーズ

Garmin fēnix 8 Pro

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スマートウォッチ初、MicroLEDで4500ニトの高輝度実現
fēnix 8 Pro MicroLEDモデルは、スマートウォッチで初めてMicroLEDディスプレイを搭載した。40万個以上のLEDチップで構成され、輝度は最大4500ニトとなる。現行のスマートウォッチでは最高値だ。
前世代モデルから視野角が6倍に広がった。斜めから見ても文字や表示がはっきり見える。色域は15%拡大し、直射日光下でも文字盤を読み取れる。耐久性は従来の約3倍で、焼き付きが起きにくい。

右のMicroLEDモデルは斜めから見た時もくっきりと表示できる
MicroLEDモデルのバッテリー持続時間は通常モードで約10日間、GPSモードで約44時間。AMOLEDモデル(約27日間、約78時間)より短い。一方で価格はAMOLEDモデルより10万円以上と高額だ。ガーミンは究極の視認性を求める人や、先端技術への興味が強い人に向けた製品と位置付ける。
モバイル通信・衛星通信技術をスマートウォッチに初搭載
inReachテクノロジーは2016年、ガーミンがDeLorme買収により取得した衛星通信技術だ。ハンドヘルド機器で使われてきた技術を、スマートウォッチサイズに小型化した。
当初は衛星通信(NTN)技術だったが、現在はモバイル通信も含めてinReachテクノロジーと呼ぶ。製品は衛星接続とモバイル通信の両方に対応する設計だが、日本国内ではモバイル通信のみ利用できる。衛星通信の国内対応時期は未定だ。

LTE-Mと衛星通信をサポートするが、日本では衛星通信は未対応だ
モバイル通信は省電力のLTE-M規格を採用した。IoT機器向けの通信規格で、長時間バッテリーを維持しながらGarmin Messengerで通話やメッセージ送信、データ同期ができる。月額1180円のINREACH ENABLED PLAN契約が必要となる。
アウトドアでの安全確保に新たな選択肢
サーフィン中に沖へ流されたり、登山で仲間とはぐれたりした場合も、ウォッチから連絡できる。SOSボタンを押すとガーミン応答センターにつながり、24時間365日日本語で対応する。

登山やマリンスポーツ時に時計からSOSできる
水上スポーツでは防水ポーチに入れたスマートフォンの操作は難しい。セーリングやカヤック中でも、fēnix 8 Proから「もうすぐ戻る」とメッセージを送れる。トレイルランでは両手にポールを持ったまま、仲間と現在地を共有できる。
LiveTrack機能では15秒から30秒ごとに位置情報を自動送信する。登山やトレイルランで長時間の単独行動時も、家族や仲間がリアルタイムで現在地を確認できる。遭難時も最終位置情報が記録される。
音声通話とテキストメッセージに加え、30秒間のボイスメッセージ送受信にも対応している。Garmin Messengerアプリと連携し、ウォッチ単体で通信できる。

通信を活用した機能を搭載する
Body Battery機能で疲労を数値管理
fēnix 8 ProのBody Battery機能は、ガーミン独自の健康管理機能だ。心拍変動、ストレス、睡眠、活動レベルから体のエネルギー残量を5から100の数値で表示する。数値が高ければ活動に適し、低ければ休息のサインとなる。
発表会ではスリープコーチの角谷リョウ氏がセミナーを実施した。角谷氏は企業の睡眠改善やアスリートのサポートを行っている。「現代人の約8割が疲労を蓄積しているが、疲労感と実際の疲労は異なる。Body Batteryで客観的に疲労を把握できる」と説明した。

スリープコーチの角谷リョウ氏
ガーミンは睡眠学会でも使用され、時計型デバイスでは睡眠計測精度が最高と学会で発表されている。「睡眠スコアを上げることではなく、疲労に対する適切なリカバリーが重要」と角谷氏は述べた。
幅広いスポーツとライフスタイルに対応
100種類以上のスポーツアクティビティに対応する。ランニング、サイクリング、水泳、筋トレなどの基本的な運動から、サッカー、野球、バスケットボールなどの球技、スキーやスノーボードなどのウィンタースポーツまで網羅している。
世界4万3000以上のゴルフコースデータを内蔵し、ハザード情報やグリーンまでの距離を確認できる。2000以上のスキーマップも収録され、滑走距離や速度、標高差を記録する。日本詳細地形図により、登山ルートの確認も可能だ。
ダイビング機能はEN13319規格に準拠し、40mまでの潜水をサポートする。スキューバダイビングやフリーダイビングに対応し、潜水時間、水深、水温を記録する。防水性能は10ATM(100m防水)で、水中での操作も問題ない。

左から、通話受信、メッセージ送受信、メッセージの履歴、Messengerチェックイン、SOS発信

左から、登山地図、睡眠スコア、スポーツアプリ、音声コマンド、Garminシェア
衛星測位はGPS、GLONASS、GALILEO、BeiDou、みちびきの5システムに対応している。GNSSマルチバンドでL1信号とL5信号の2周波数帯を受信する。みちびき対応により、ビル街や山間部でも正確な測位ができる。
Suica対応で日常使いも快適に
Suica決済に対応し、ウォッチをかざすだけで改札を通過できる。買い物の支払いもできる。Spotify、Amazon Music、LINE MUSICの楽曲を本体に保存し、ワイヤレスイヤホンで再生できる。
LEDフラッシュライトを内蔵し、夜間ランニングや停電時に使える。音声メモ機能でアイデアやタスクを記録できる。

Suicaにも対応する
バンドは26mmのQuickFitシステムで、工具なしで交換できる。

Garmin fēnix 8 Proに別売チタン製バンドを装着したところ
最大27日間動作のロングバッテリー
fēnix 8 Pro(AMOLEDモデル)のバッテリー持続時間はスマートウォッチモードで約27日間、GPSモードで約78時間だ。長期の旅行や登山でも充電頻度が少なくて済む。
MicroLEDモデルはスマートウォッチモードで約10日間、GPSモードで約44時間動作する。高輝度ディスプレイながら、週1回程度の充電で運用できる。
マルチGNSSマルチバンドモードでは、fēnix 8 Proが約53時間、MicroLEDモデルが約34時間動作する。LTE-M通信併用時は、それぞれ約21時間、約17時間の連続使用ができる。
ガーミンジャパンの寺崎圭一氏は「アドベンチャー層とテック・ビジネス層の両方をターゲットに、過酷な環境から日常の自己管理まで対応するハイパフォーマンスモデル」と述べた。
スマートフォンなしで通話できるLTE-M通信、世界初のMicroLEDディスプレイ、Body Batteryによる疲労管理——高額ではあるが、これらの機能を必要とするプロフェッショナルには投資に見合う価値があるだろう。