

芥川賞作家✕東洋経済オンラインの「異色コラボ」連載小説!
「子供部屋おじさん」が、あなたの復讐、請け負います。
パワハラ、詐欺、痴漢冤罪(えんざい)、書店万引き――。裁かれぬ現代社会の悪を、人知れず断罪する者たちがいた。ダークウェブに潜む謎の復讐代行組織「子供部屋同盟」。
社会から疎外された「子供部屋おじさん」たちが、その特異なスキルを武器に、歪んだ正義を執行する。
芥川賞作家・高橋弘希が放つ痛快無比の世直しエンタメ『子供部屋同盟』より、第5章を4日に分けて毎日お届けします(今回は1日目)。
ブリキ看板が掲げられている朝日堂書店
朝日堂書店は、森田浩一(こういち)の自宅の斜向かいにあった。
いわゆる町の本屋さんで、昭和から営業している老舗だ。軒下には店名が記された、やや錆びたブリキ看板が掲げられている。
売場は二十坪ほどで、店頭に雑誌コーナーがあり、左手には漫画の棚や文具コーナーがあり、右手の棚にはずらりと小説や歴史書などが並んでいる。
浩一は中学一年ゆえに、小遣いで買える本は限られていた。でも本を買わずとも、書店で棚の背表紙を眺めているだけで胸が弾んだ。
心惹かれるタイトルを見つけると、その本を手に取って裏表紙のあらすじを読む。あらすじが魅力的だったなら、最初の数ページを読む。続きを読みたくて我慢できなくなったら、レジへ持っていく。
