

芥川賞作家✕東洋経済オンラインの「異色コラボ」連載小説!
「子供部屋おじさん」が、あなたの復讐、請け負います。
パワハラ、詐欺、痴漢冤罪(えんざい)、書店万引き――。裁かれぬ現代社会の悪を、人知れず断罪する者たちがいた。ダークウェブに潜む謎の復讐代行組織「子供部屋同盟」。
社会から疎外された「子供部屋おじさん」たちが、その特異なスキルを武器に、歪んだ正義を執行する。
芥川賞作家・高橋弘希が放つ痛快無比の世直しエンタメ『子供部屋同盟』より、第3章を4日に分けて毎日お届けします(今回は2日目)。
裏探偵倶楽部で若林とやり取りをした
直人はダークウェブで、二つの復讐代行サイトを見つけた。
一つは「子供部屋同盟」。もう一つは「裏探偵倶楽部」。前者は動機を対価とし、後者は高額金銭を対価とするという。
当然ながら、直人は裏探偵倶楽部を選んだ。動機を対価に復讐代行するなんて有り得ないし、何より、やり取りをした通信部のジョン・万次郎なる人物も、まともな人間とは思えなかった。
裏探偵倶楽部では、若林と名乗る男とやり取りをした。
──うちでは相手の素行調査をして、弱みを握って強請(ゆす)る手法を取ってます。例えば表の探偵も、民事裁判で不倫を立証するために素行調査をするでしょう。似たようなものです。うちは不倫という弱みを握って、相手を強請るわけです。えぇ、もちろん脅迫・強要・恐喝は犯罪です。まぁ、そのへんは裏の探偵ってことで、大目に見てくださいな。
この若林という男も、もちろんまともではない。そもそも復讐代行を生業としているのだ。まともな人間ならば勤まらないだろう。
