![]()
独自に構築した精度の高い法人データベース(DB)を提供し、企業の法人向け(B to B)セールスとマーケティングを支援するユーソナー。DX・AI時代でデータの価値が高まる中、大企業の顧客を中心にサービス導入数が急増し、国内でのDX推進活動が本格化した2020年以降、同社の業績も右肩上がりで推移している状況だ。2025年10月には東証グロース市場への新規上場を果たし、提供するソリューションだけでなく、企業としてもより幅広い角度から注目を集めるようになった。ユーソナーの事業が急成長している理由、さらにその裏側にある同社の企業文化と成長戦略について、代表取締役社長の長竹克仁氏に聞く。
「情報が企業を自由にする」社是を掲げる“競争しない”会社
――ユーソナーが大切にしている理念と、市場や顧客への提供価値について教えてください。
長竹氏当社は、常に進化し続け、創意工夫をし、ユニークで差別化のある商品・サービスを提供する「どこにもない会社」でありたいと考え、「情報が企業を自由にする」という社是のもとで事業を展開しています。データを整え、積極的にデータを提供することで企業の意思決定に対して大きく貢献していく――。それがユーソナーの価値であり、目指すところです。
ソリューションに関しては、1250万件掲載の法人DB「LBC」と、それを活用する「ユーソナー」をはじめとするサービス群「ソナーサービス」をSaaSで展開しています。その際に当社は「非競(ひきょう=競争をしない)」というコンセプトで、コアコンピタンスであるDB領域に注力し、周辺はパートナーとの共創戦略をとっています。これにより、お客さまが従来のデジタル投資を無駄にすることなく当社のサービスを活用することができます。
――情報やデータの価値を訴求しているユーソナーとして、企業顧客を取り巻く社会情勢やビジネス上の課題をどう捉えていますか?
長竹氏DXの一環として多くの企業が営業支援システム(SFA)やマーケティングオートメーション(MA)といったツールを導入しているものの、「思った様な成果が出ていない」との相談も多いです。ツール内に本来必要な情報が入っておらず網羅性や精度に課題があるという状況に経営層がようやく気付き始め、問題を解決するためには、大元のDBが正しく目的に沿ったものでなければならないと認識するようになってきた、と感じています。

ユーソナー株式会社 代表取締役社長の長竹克仁(ながたけ かつひと)氏
――そもそも、なぜデータ活用が必要なのでしょうか。
長竹氏セールス&マーケティング領域では、「効率性」と「再現性」の2つが最大の理由です。昨今では人材不足もあって労働生産性の向上が課題となり、デジタル化により短時間で同等以上の成果を出すことが求められている状況です。その中で、以前のように足で稼いで優良顧客を見つけていくことや、人材育成にあてる時間の確保が難しい。時間をかけずに確度の高い見込み顧客を効率的に見つけたいというニーズが生じています。同時に、優秀な営業担当者のプロセスを分析して行動特性モデルを見出し、誰でも実践できる再現性が期待されています。
また、近い将来、さらなる人材不足で仕事を従来の半分以下のリソースで担わざるを得ない状況もでてくるでしょう。そこをAIが代替すると予測されていますが、業務内容に応じて作業を自動化できても、人でなければ対応できない部分は残ります。それを補うのが、データの利活用です。ツールやDXを有効にするための鍵がデータの「正確性」と「網羅性」です。例えば、新人教育に十分な時間を割けないとすれば、データ分析によって見出された「成果への再現性の高い情報」の蓄積、共有が大事になってくるでしょう。
JTB、ニトリなど多くの導入企業で成果
――ユーソナーでデータを有効活用している顧客事例を紹介してください。
長竹氏セールス&マーケティングの事例として、JTB様は名刺情報を起点に法人営業を高度化させました。名刺には書かれていない、その人の会社の売上高や利益、興味・関心、従業員数の増減などの幅広い“脇の情報”を使った営業活動をしていくために、LBCの導入と同時に名刺管理ツールを当社の「mソナー」に刷新しています。その結果、正確な情報をもとに仮説を組み立てやすくなり、名刺情報の登録数が2.3倍に増え、名刺起点の営業活動を促進しました。そこから顧客ターゲティング基盤である「プランソナー」を活用し、自社の顧客をAIで解析して傾向値を把握し、相似率が高い企業群の属性を出しながら最適な見込み顧客リストを作成されています。
工数削減で生産性向上を実現した事例がニトリ様です。ニトリ様は、B to B営業に当社のサービスを活用し、年間1300時間の工数を削減されました。正しい仮説を立てるためにまず顧客DBをユーソナーで整備し、プランソナーで欲しい情報を必要な時に取得できる仕組みを導入したことでプレセールスの時間を短縮し、営業担当者が顧客に向き合う時間を捻出しています。
JTB様とニトリ様は、ともにユーソナーの法人DBを組み込んだことで営業支援ツールがうまく機能するようになったことも、大きなポイントになっています。
再現性に関する事例では、オフィス向け大手販売会社様が成績トップの担当者の営業手法を学習したAIを構築する際に、LBCが採用されました。人材教育と営業活動の過程でAIがより良いやり方を提案しており、定量的な成果も出ているとのことです。また、大手銀行様では、中小企業顧客の口座数を増やすプロジェクトを進める際にユーソナーを導入し、現場の方々が顧客へ営業アプローチする際に必要な情報をキャッチアップできる環境を構築しています。
ユーソナーが掲げる人材戦略と成長戦略
――ユーソナーのビジネスを支える社内の人材戦略についてお聞かせください。
長竹氏当社が求めているのは、挑戦ができ、前向きに物事を考え、正直に誠実に話ができ、人に感謝の気持ちを持てる人材です。そのような人材を迎え入れたいですし、既存の社員に対しても行動方針として示しています。
そして、当社のお客様を深く知るために社員が自らユーソナーを使いこなし、短時間で深い情報を得られるようにしています。そのほかにも、お客様の業界や世の中のトレンドを学ぶため、書籍購入時に半額を支援する制度もあります。エンジニアのスキルアップを支援すべく外部講師から最新技術を学習する機会や、資格取得チャレンジへの金銭的な補助や、スキル取得時のインセンティブ制度も用意しています。
――今後の成長戦略を教えてください。
長竹氏何よりもまずは、当社自身がユーソナーを使いこなしていくことが重要だと考えています。自社製品を使って自社の成長を実現していくということに注力します。その結果の一例が、労働時間の短縮です。
当社は今年(2025年)、1日の労働時間を8時間制から7時間制に変えました。自社ツールで生産性を向上させ、実際に就業時間を制度として短くしている例は、あまりないのではないでしょうか。労働時間を減らしたにもかかわらず、残業時間が減り、売上、利益とも上昇しています。ユーソナーを使い倒せばどんどん成長できるというのが当社の成功体験でもあり、成長戦略の柱です。
その上で、(1)顧客基盤の拡大、(2)単価の向上、(3)解約率低減――の3つの取り組みを進めていきます。
(1)では、LBCによってグループを形成している企業群の構造を可視化し、当社のサービスを導入している企業の事例をグループにも展開することで、効率的に営業活動を進めていきます。(2)では、既存のお客様にプランソナーやmソナーなどもご利用していただけるようにしていきます。(3)については、解約率が既に0.21%と極めて低い水準にあり、CS(カスタマーサクセス)にてさらに丁寧に顧客フォローを行っています。ここでは、当社の「ライブアクセス」というインテントデータを使います。このサービスは、どの顧客企業がヘルプページに頻繁にアクセスしているかといった行動を検知でき、お客様が困っているタイミングで、即時フォローサポートを実現できます。データが、まさに適切な行動を促すのです。
――成長戦略を通じて顧客にどのような価値を伝えたいですか。
長竹氏一番は、お客様の“可能性の芽”を伸ばしたいということです。ツールや人と並んで、データへの投資は、企業の成長性を高めるためさらに必要不可欠なものになるでしょう。また、AIの活用が必須となった中で、学習用の教師データや参照用データをどうするかという問題が生じていますが、そこでも当社はクローズドな環境で安全に活用でき、かつ信頼性の高いデータを提供できます。
安全や信頼という観点では、東証グロース市場に上場を果たしたことで、責任ある企業として1つの形を得ました。ただ、これはあくまでスタートラインに立った段階です。上場をきっかけに、次なるステージに向けて一層尽力していきます。