
カテゴリー5のハリケーン「メリッサ」が最大風速約80m/秒でジャマイカに上陸する中、ソーシャルメディアにはAIが生成した誤解を招く動画があふれている。実際には起きていない壊滅的な洪水や建物の倒壊、救助シーンなどが映し出されているのだ。
「X」「TikTok」「Instagram」「WhatsApp」などのソーシャルメディアプラットフォームで、偽の動画が急速に拡散し、数時間で数百万回の再生回数を記録している。こうした動画の多くは、過去の嵐の映像を切り貼りしたものや、テキストから動画を生成するAIツールですべて作成されたものだ。
危険かつ差し迫った自然災害などの危機的状況において、情報の正確さが命を救うこともあるまさにその時に、こうした偽の動画は混乱やパニックを引き起こし、人々の注意をそらしてしまう可能性がある。
自然災害は常にデマや過去の映像の使い回しの温床となってきたが、AI生成動画の台頭がその問題を一気に深刻化させた。OpenAIの「Sora」などのツールやAI動画プラットフォームは、嵐、洪水、被害の様子をリアルに見える映像として数秒で描き出し、わずか数時間のうちにオンラインで数百万人に届けることができる。
なぜ嵐はフェイクニュースを引き寄せるのか
嵐は視覚に訴え、感情を揺さぶり、急速に変化する。これは、偽情報がバイラルに広まるための完璧な条件だ。以前は、動画がコンテキストから切り離されたり、別の嵐の映像としてラベル付けされたりすることが多かった。しかし今は、ゼロからデジタルで捏造することが可能になっている。
中には、実際には起きていないこの世の終わりのような洪水を描写するものもあれば、上陸の数時間も前から「リアルタイム」の状況を伝えていると主張するものもある。今週出回っているいくつかの動画には、高潮の中を泳ぐサメの映像や、人々が苦しむ痛ましい描写などが含まれている。
こうした偽動画は嵐の危険性を誇張し、パニックを引き起こし、信頼を損ね、救急隊員の妨げになる可能性がある。偽情報が事実の報道から人々の注意をそらしてしまうためだ。
以下の3つの動画はすべて偽物だ。これらには(短時間ではあるが)Soraのウォーターマークが付いており、OpenAIの動画生成ツールで作られたことを示している。
@pinkalicious217 Hurricane Melissa made landfall in Jamaica #hurricanemelissa ♬ original sound – All Ai
@10storytv #hurricanemelissa #jamaicantiktokviral ♬ original sound – 10storyTv
@bigfootvlogboyz hurricane Melissa hits jamaica hard. news reporter get hit by debris. hurricane Melissa update #jamaica #kinsgston #hurricane ♬ original sound – bigfootvlogboyz
オンラインで真実と虚構を見分ける方法
SNSのフィードにハリケーンの衝撃的な動画がたくさん表示されたら、真実と虚構を見分けることが重要だ。
「高い洞察力を持たなければならない」と、ジャマイカの教育・青年・情報大臣であるDana Morris Dixon氏は述べる。「何が良い情報で、何が悪い情報かを知る必要がある。嵐の進路や、何をすべきかを知りたいのであれば、公式な情報源にあたる必要がある」
Dixon氏は、ジャマイカ情報サービス、災害準備・緊急事態管理室の情報サイト、そして首相官邸のページが、正当かつタイムリーな最新情報を得るための情報源だと強調した。
情報を見極めるための方法をいくつか紹介しよう。
情報源を確認する。動画が見慣れないアカウントから発信されていたり、タイムスタンプがなかったり、知っている報道機関のロゴが入っていなかったりする場合は、検証されるまで偽物だと見なすべきだ。また、OpenAIのアプリで作られたことを示すSoraのウォーターマークを探したり、他の誰かが偽動画だと指摘していないかコメントを読んだりすることも有効だ。
新しい、現地の映像かに注意する。地理的な特徴はジャマイカと一致するだろうか。映像は最近撮影されたものだろうか。「メリッサ」の動画として出回っているものの多くは、実際には過去にカリブ海やメキシコ湾を襲った嵐の映像かもしれない。
信じる前に裏付けを取る。ジャマイカ気象局や米国立ハリケーンセンターといった信頼できる機関や、BBC、Reuters、AP通信などの定評ある報道機関の情報で確認することだ。
共有する前に一呼吸置く。バイラル動画は、もし偽情報を含んでいた場合、害を及ぼしかねない。信頼できる情報源がその内容を検証するまで、再投稿は待つべきだ。
地域の情報を頼る。被災地域にいる場合は、避難や安全に関する最新情報について、地元の緊急機関、ラジオ局、市や郡レベルの当局を信頼する。
公式な警報に注意する。リアルタイムの指示を得るには、政府の発表や地元の緊急情報フィードを情報源とするべきだ。自身の安全は、バイラルなコンテンツではなく、正確な情報にかかっている。
AIによる画像や動画の生成が容易になる中、「メリッサ」のようなハリケーンは、われわれに新しい現実の到来を予感させる。それは、オンラインで目にする情報の多くを信頼できないという現実だ。
安全の確保とは、時には救命に関わる正確な情報を求める際に、疑う視点を持って入念に確認するということなのだ。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。