
ソフトバンクの宮川潤一社長は11月5日の2026年3月期第2四半期決算説明会で、楽天モバイルが値上げしないと宣言していることについて「ローミングに頼った現状をみるとアンフェア(不当)だ」と強く批判した。基地局の全国展開に必要なコストを負担せず、他社回線に依存する構造で値上げ不要と主張するのは不公平だとの考えを示した。
エリア構築の「面」負担が競争の前提
宮川社長は、楽天モバイルが「構造が違うから値上げしない」と発言していることに言及し、キャリアがコストを負担する構造の違いを指摘した。
都心部は利用者が多く、放置していても収益が上がる。しかし全国展開するキャリアには、採算の取れない地域でもエリアを構築する義務がある。宮川社長は「残りの10%、特に5%のエリアを作るには面で作るのに非常に苦心した」と説明した。
山間部や過疎地では高額な基地局を建設しても、実際に使われるのは都心部の1%以下だ。それでも「面で作らないといけない」ため、電波測定を繰り返す非効率な投資が必要になる。
宮川社長は「それをはしょってそのような発言ができるならそれは不公平」と述べ、エリア構築の負担を回避したまま価格競争を主張する姿勢を批判した。
ローミング依存は「アンフェア」
楽天モバイルはKDDIとのローミング契約で、自社エリア外ではau回線を利用している。この構造について宮川社長は「ローミングに頼った現状をみるとアンフェアだ」と断じた。
全国のキャリアが負担する基地局建設コストを負わずに、他社の設備を利用して事業を展開する構造は、競争条件として公平ではないとの認識を示した形だ。
「電波のアロケーション」問題にも言及
宮川社長は電波の割り当てにも触れ、全国展開の義務を負うキャリアと、ローミングで補完するキャリアが同じ条件で競争することへの疑問を呈した。
楽天モバイルは2020年のサービス開始以来、自社エリアの拡大を進めているが、依然として人口カバー率でドコモ、KDDI、ソフトバンクに及んでいない。ローミング契約の見直しも進められているが、完全な自社エリア化には至っていない。
モバイル事業の競争環境に一石
今回の発言は、キャリア間の価格競争が激化する中で、競争の前提条件そのものに疑問を投げかけるものだ。全国キャリアとしての義務を果たすコストを負担しているキャリアと、ローミングでカバーするキャリアでは構造が異なる。
宮川社長の批判は、公正な競争環境の在り方について、改めて議論を呼ぶことになりそうだ。
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