
NTTドコモ、三井住友信託銀行、住信SBIネット銀行の3社は12月19日、住信SBIネット銀行の商号を2026年8月3日から「ドコモSMTBネット銀行」に変更すると発表した。生成AIを活用した新サービス「NEOBANK ai」も2026年2月に提供を始める。音声やチャットだけで振込などの銀行取引が完結する。

左からNTTドコモの前田義晃社長、住信SBIネット銀行の円山法昭社長、三井住友信託銀行の大山一也社長
ドコモ・三井住友信託銀行との3社連携が本格始動
住信SBIネット銀行は2025年10月1日付でNTTドコモの連結子会社になった。サービスブランドは「d NEOBANK」に変わっている。今回の発表で明らかになったのは、商号変更だけではない。資本再編と協業施策の中身も具体化した。
資本再編の内容はこうだ。ドコモが持つ住信SBIネット銀行株式の一部(約500億円分)を三井住友信託銀行に譲渡する。加えて三井住友信託銀行を引受先とする第三者割当増資(約300億円)も実施。合計800億円が三井住友信託銀行から入る計算になる。取引後の持株比率はドコモ55.37%、三井住友信託銀行44.63%。ただし議決権比率は50%ずつに調整される。
発表会に登壇したNTTドコモの前田義晃社長は「暮らしと金融の境目のない未来を目指す」と話した。同社によると、dポイント、dカード、d払いをセットで使っている顧客の解約率は、使っていない顧客の3分の1以下。銀行サービスを連携の「ハブ」に据え、顧客接点をさらに厚くしたい考えだ。
音声で「田村君に3000円送って」——AI銀行サービスの衝撃
目玉は生成AIを使った「NEOBANK ai」だ。住信SBIネット銀行のアプリで2026年2月に正式提供する。本日からベータ版テスターの募集も始まった。
住信SBIネット銀行の円山法昭社長は発表会でデモ動画を流した。スマホに「田村君に3000円送って」と話しかける。するとアプリが振込先の候補を出し、確認ボタンを押せば振込完了。「今月コンビニにお金使いすぎ?」と聞けば、デビットカードの明細を分析して答えてくれる。

NEOBANK aiでは音声やチャット、画像で振込や家計簿分析などが可能になる
円山社長が掲げるのは「インビジブルバンク」という概念だ。銀行機能が暮らしに溶け込み、利用者が意識しなくても金融サービスの恩恵を受けられる。そんな世界を描く。ChatGPTやGeminiなど外部AIからも銀行機能を呼び出せるようにする構想も明かした。「デバイスフリー、アプリフリー、ブラウザフリーのAIサービスを実現したい」と円山社長は言う。
採用しているAIモデルは非公開。外部AIとの連携については、ChatGPTやGeminiなどいろいろなAIと連携するオープン戦略を取るとしている。
マネックス証券との連携で「銀行×証券」をシームレスに
同じ日、NTTドコモは住信SBIネット銀行・マネックス証券との業務提携契約も結んだ。2026年8月から3つのサービスを始める。

2026年8月からマネックス証券との口座同時開設やスイープ機能を提供
まず同時口座開設。住信SBIネット銀行の銀行口座とマネックス証券の証券口座を、一度の手続きでまとめて作れる。
次にスイープ機能。銀行口座から証券口座へ自動で資金が移る仕組みで、入出金の手間なく株式売買ができる。SBI証券とは既に同じ機能を提供しており、マネックス証券にも広げる形だ。
3つ目は優遇特典。dポイント付与を軸に、銀行・証券・通信をまたいだポイントプログラムを用意する。
dポイント連携と住宅ローン金利優遇も
2026年8月の商号変更に合わせ、dポイント連携が本格化する。給与受取や口座振替で住信SBIネット銀行の口座を使えばdポイントが貯まる。dカードの引き落とし口座に設定するとポイント還元率も上がる。
住宅ローンも手厚くなる。ドコモのサービス利用状況に応じた金利優遇プログラムが始まる予定だ。住信SBIネット銀行の住宅ローン残高は2025年9月末で8兆6450億円。国内トップクラスの実績を、ドコモの顧客基盤と掛け合わせる狙いがある。

銀行サービスとドコモサービスの併用でdポイント付与や住宅ローン金利優遇を受けられる
既存ユーザーへの影響は小さい。dアカウントとの連携は任意のままで、商号変更後も強制はしない。「銀行アプリのUXが高く評価されており、dアカウント必須になると使いづらくなる可能性がある」(広報担当者)。既存ユーザーの利便性は守る方針だ。
他社アプリにも「ドコモ経済圏」を組み込める
住信SBIネット銀行はJALやヤマダデンキなど28社以上に銀行機能を提供している。各社のアプリ上で口座開設や振込ができる仕組みで、「NEOBANK」と呼ばれるサービスだ。新規口座の7割がこの経路で開設されている。

銀行機能に加え、通信・エンタメ・ポイント・決済を外部企業に提供する「スマートライフプラットフォーム」構想
3社連携で、この仕組みが拡張される。円山社長によると、今後は銀行機能に加えて、ドコモのポイント・決済、三井住友信託銀行の資産運用・相続サービスも外部企業に提供できるようになる。パートナー企業は自社アプリに「ドコモ経済圏」をまるごと組み込める選択肢が生まれる。
前田社長は「2030年頃には金融売上を今の倍にしたい」と語った。円山社長も「年率10〜20%ではなく、はるかに高い成長を狙う」と意気込む。
「銀行は行くものから、どこにでもあるものへ変わった」。発表会で繰り返されたこのフレーズが、3社の目指す先を物語っている。
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