
フリーWi-Fiと聞いて「あまり良い印象がない」と感じる人は少なくないだろう。街を歩いているうちに、ログインが必要なフリーWi-Fiにつながってしまい、突然通信ができなくなったり、セキュリティ面が気になって慌てて接続を切ったりした経験がある人も多いはずだ。
そうした従来型のフリーWi-Fiとは性格が大きく異なる仕組みとして、いま注目されているのが「OpenRoaming」だ。東京都は、このOpenRoamingに対応した公衆Wi-Fiを、都内およそ1500カ所に、今後3年以内で整備する方針を打ち出した。
OpenRoamingとは
OpenRoamingとはどのような規格なのか。NTTブロードバンドプラットフォームによると、「さまざまな公衆Wi-Fiを横断的に利用でき、自動で接続される新たな仕組み」だ。公衆Wi-Fiサービス関連事業者の業界団体であるWireless Broadband Alliance(WBA)が推進する、国際的なWi-Fi相互接続基盤となる。
利用者は最初に一度だけ設定を行えば、OpenRoamingに対応した国内外のWi-Fiスポットに自動的に接続される。接続のたびにIDやパスワードを入力する必要はない。
さらに、公衆Wi-Fiの弱点とされてきたセキュリティ面も強化されている。Wi2によれば、「アクセスポイントの正当性を電子証明書で検証する仕組み」と「無線通信区間を異なるキーで暗号化する技術」によって、高い安全性を確保しているという。
使い勝手の感覚は、携帯電話の通信に近い。ユーザーは基地局の存在を意識せずに利用しているが、実際には契約した通信事業者のネットワークのみに接続されている。OpenRoamingは、こうした携帯通信に近い体験を、Wi-Fiでも実現しようとする取り組みだ。さまざまなスポットで利用できる利便性と、高いセキュリティの両立を目指している。
東京都が本格導入へ
東京都は12月、このOpenRoamingに対応したWi-Fiを公衆電話ボックスなどに設置するため、NTT東日本と基本協定を結んだと発表した。災害時の通信手段の確保や、訪日外国人を含む利用者の利便性向上を目的に、都内全域で安全性の高い公衆Wi-Fi環境を整備する方針だ。
協定に基づき、東京都とNTT東日本は、主要駅周辺や公園など人が多く集まる場所を中心に、3年間でおよそ1500カ所にWi-Fiスポットを整備する計画だ。これにより、都有施設などを含めた都の公衆Wi-Fiは、現在の約3倍となるおよそ3600カ所に増える見通しとなっている。利用可能な場所には、対応スポットであることを示す緑色のステッカーを掲示するという。
あわせて、都内でのOpenRoaming対応Wi-Fiの利用を広げるため、都民や来訪者に向けた普及啓発にも取り組む。さらに、NTT東日本の防災研究所を活用し、災害時の通信環境の検証や、対応力の強化も進めるとしている。
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